オイカワアユミ[感情の専門家/エッセイスト]
2023年夏、結婚や夫と経営していた会社、故郷、生活の基盤全てを捨てて、人生をリセットさせました。報われない自分に終止符を打ちたかったからーー。この経験が、"結婚"という正解のないチャレンジに対して、あなたが自分らしい答えを見つけるヒントになればと思い、筆をとりました。
第1回:「最高の結婚相手のはずだった。」
第2回:「男女の"感覚の違い"が苦しいなら。」
第3回:「夫は妻が育てるべき?私が出来なかった『夫育て五ヶ条』」
自分の気持ちだけでは答えを出せないのが結婚。
私たちには子供はいなかったけれど、一緒に会社を経営していたので、従業員や収入源のことを考えれば、自分の気持ちだけで離婚を選ぶ訳にはいきませんでした。
私無しで夫は会社を存続していくことはできないし、私も生活していくことができない。
結婚生活で望まない状況になった時の選択は人それぞれですよね。夫育てを選ぶ人、離婚を選ぶ人、子供が卒業するまで待つ人。
結局は、現実をどう受け止めていくかということなのだけど、どうしてもその答えが分からない時期もあります。
正確に言えば、自分の気持ちで答えを出すことはできるけれど、それを現実化するには周囲を整える必要があるのが結婚。どう整えていくか、その方法が分からないーー。
そんな時は"もがく"しかない!
ベストな道を見つけるまでは、ストレス発散を適度にしつつ、一通りもがいてみればいいと思うのです。
もがく上で絶対に大事なこと
11年間もがいた私が一つだけアドバイスするとしたら、これです。
"自分の気持ちに蓋をしない"
実際に自分が感じていることを認めなかったり、蓋をしてしまうのは、本当にお勧めできません。
例えそれが不都合なものだったとしても、自分の気持ちに嘘をつくと100%拗れてしまいます。
私が結婚生活につまずいた一番の原因は、あの時自分の気持ちに蓋をしてしまったからじゃないかと思い当たることがあるのです。
そして、結局は、「報われなさ」もそこと深く繋がっているように感じています。
夫への恋心が死んだ"あの時"のこと
実は私、挙式の三ヶ月後には、夫への恋心がなくなっていたんです。
原因は飼い猫のもっちゃん。夫が起業したばかりでナーバスになっていた頃に、彼がもっちゃんを怯えさせる事件がありました。
暴力を奮った訳ではないけれど、穏やかでなかったのは確か。それに幻滅した私は、一気に夫への恋心を失ってしまったんです。
でも、私はそれを認められなかった。
夫は、ついこの間永遠の愛を誓った 相手で、私に最高の安心をくれ、父を泣かせてまで結婚に踏み切った相手(第一回参照)。
「これから死ぬまで共に過ごす相手なのに、挙式後たった三ヶ月で好きでなくなってしまうなんて有り得ない。」
そんなふうに思った私は、幻滅した気持ちに蓋をして、夫への恋心は消えていないと思い込もうとしました。
その状態で夫の起業を手伝い、苦手な「裏方」に回ったことで、私はどんどん自分の本当の気持ちを置き去りにしていくことになります。
その最中も、本当はずっと混乱していたけれど、手伝わなければいけないことが次々出てきて、そんなことは言っていられなかった。
「愛する夫のために私は力を尽くすべき」という建前で動いていたような感じでした。
-恋心のお葬式
二年ほど経ったところで、もっちゃん本人がとっくに夫を許し仲良くしているのに、自分だけが許していないことに気がつきました。その時、私はようやく受け取ったんです。
「私の恋心はあの時死んでいたんだ」と。
私は、「夫への恋心」だけではく、恋心そのものを失っていたんです。だから、何に対してもトキメキを感じられないようになってしまっていました。
振り返れば、あの頃の風景はみんな灰色がかって思い出されるのです。
「死んだ恋心」を成仏させるためにお葬式を挙げ、無事私の恋心は再生することができました。トキメキが、復活しました。
(ちなみに、お葬式というのは、お線香代わりのセージの葉を恋心に見立てて、それが燃え尽きるのを見届けるだけ。受け入れられない心の傷を終わりにするのに‟お葬式“お勧めです。)
-「不都合な気持ち」を一旦受け止めよう
恋心をミイラ化させたその二年間、本音よりも建て前や立場で動いていたことが、私を迷子にさせていたのだと、今は思います。
普段、私たちはほとんど意識していないけれど、感覚というのは自分の羅針盤です。実際に感じていることを認めずにいると、どう進んだらいいのか分からなくなってしまうんですよね。
そうなると、無意識に相手に従って動いてしまったりする。もがく時間も長くなります。
そうなるくらいなら、不都合な気持ちも一旦受け止めた方がいいし、その方が健全な方向に状況が動く気がします。
さて、ここで一つ問題提起をさせてください。
あなたの恋心、今どこにありますか?
全ての方が恋愛結婚ではないと思いますが、恋愛結婚だった方、あなたの恋心はいまどうなっているでしょうか?
父の愚痴ばかり言う母の、「認めたくない本音」
ちょっとここで、私の母の話をさせてください。
母は、私が物心ついた頃からずっと父の愚痴を言っているのですが、75歳を迎えようとしている今も元気に父の愚痴を言っています。
母が口を開けば、話題は全部父のこと。昔はうちの両親は仲が悪いんだと本気で悲観していた私も、それがどういうことなのか今は理解できるようになりました。
母は父が好きなのです。
本人は絶対に認めないけれど、母の恋心は若い頃から変わらず、ずっと父に向けられている。少女のように恋し続けるのは母が求めていることのような気もします。
でも、いろいろ傷つきすぎてそれを拗らせて認められずにいる。それが母の「報われなさ」を生んでいるように見えます。
-「報われなさ」は行き場を失った恋心
そんなことを自分にも当てはめてみて思うのは、「報われなさ」は行き場を失った恋心なんじゃないかということ。
傷ついてしまい込んでしまった恋心は、時が経っても変化できずに、ずっと行き場を求めています。
お葬式を挙げることで私の「恋心そのもの」は復活したけれど、夫への恋心は上手く成長させることができませんでした。
もう少し恋させていてほしかったのに、幻滅した上に私の大嫌いな「内助の功」をガンと求められて、私の恋心は行き場を失ってしまったのです。
あなたが今の結婚生活に「報われなさ」を抱え、その状態をどうしたらいいのか分からないなら、あなたの恋心も行き場を失ったままでいるのではないでしょうか?
もしそうだとしたら、まずは自分が傷ついていることを認めてみてください。
蓋をしていた気持ちを思い出すことができれば、欠けていた感覚がバランスを取り戻し、今改めて動かすことができるものが浮上してくるかもしれません。
もがく時間は、そんなふうに気持ちに蓋をしてやり過ごすしかなかった過去を受け止める時間でもあります。
「もがくしかない時期」改めて自分にフォーカスしてみてはいかがでしょうか?
最後にもう一度、質問させてください。
あなたの恋心、今どこにありますか?
〉〉第5回 「【離婚を決断した瞬間】報われなさを終わりにするのは誰?」