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こんにちは。パートナーシップと性のカウンセラー小野美世です。
夫婦間のセックスレスに関するご相談を受けていると、必然的に不倫・婚外恋愛をする側のお話もよくお聞きします。
婚外にパートナーを作っておられる方、同じく夫婦間のセックスレスで悩んでいる男性に出会い、既婚者同士で恋愛されている方も少なくありません。
そんなお一人のCさんから、こんなメッセージが届きました。既婚女性で、彼も同じく既婚男性です。
「この関係のゴールって、いったい何なんでしょう?それがわからなくなってしまって」

「理想の形」はない

Cさんにはお子さんもいらっしゃり、夫とはセックスレスであるものの、それ以外は仲が険悪なわけでもない。
でも既婚の彼を好きになってお付き合いしているという状況でした。
さて、この関係のゴールをどのように捉えたらいいのでしょうか?
恋愛や結婚、夫婦関係には、「これが理想の形」「こんなふうになれたら幸せになれるんだ」というようなものが、たくさんあります。
周りの人から見せられるし、SNSや雑誌、ドラマにもあふれています。
一方、既婚者同士の婚外恋愛には「これがゴールです!」「これが理想の形」「これがみんなの憧れ」のように共有されているイメージはありません(むしろ、人の道に外れたこと…というような見方が多いでしょう)。
つまり、「道なき道」を歩むのです。
「道なき道」の方向を自分で決める

人は、「ゴール」や「これがいい形だよ」というお手本が周りにないと、途端に前に進みにくくなりますね。
でも、既婚者同士の恋愛では「道なき道」の中で、自分の進む方向を決めていかなくてはなりません。
ただ、お互いに既婚者で子どももいる。そしてお互いの家庭を壊す気はないと双方が考えている場合、基本「現状維持」がゴールとなるでしょう。
先の質問をされたCさんも「自分の家庭も、相手の家庭も壊すつもりはない」とのお考えでした。
つまり「どちらかの離婚」はゴールにはなりません。
どちらかに今の状態を維持したい気持ちがなくなったら、そこで関係は終わります。
なので、今日も明日も「今の状態を続けていく」こと以外は、ゴールになりえないのかなと思います。
現状維持は、消極的な判断?

既婚者同士、今の結婚を解消したいと望んでいる場合は、ゴールが「お互いの離婚」ですが、実際に行動をできないことが多く達成の難しいゴールだと言えます。
一方が離婚したいと思っていて、もう一方がそうではない場合は、お互いの希望にズレがあるのでいずれ何らかの形で二人の関係がぎくしゃくするでしょう。
「現状維持」は消極的なゴールのように思えるかもしれませんが、関係を長続きさせるためには必要な要素とも言えます。
-長続きしている二人の特徴-

既婚者同士でお付き合いされている方のお話をお聞きしていると、長続きしている人たちに共通する特徴が浮かびあがってきます。その中から3つ紹介しますね。
1.お互いを大切な人であると認識している
2.相手に過度の期待をしていない、相手に何かを変えてほしいと思っていない
3.自分の不安、嫉妬、依存といった感情とうまく付き合っている
少し補足していきます。
互いが"大切な人"という認識
当たり前のことのように思われるかもしれませんが、長続きしているお二人は、これをお互いに認識し伝えあっている場合が多いです。
意思疎通がはかれている、相手の気持ちがわかっているというのは安心感につながります。
相手に"期待"をしない
相手に「奥さんと離婚してほしい」「自分との結婚を望んでほしい」という期待をしていないというのも大事なポイントです。
自分の家庭は壊れることがないよう対応している人も多いです。
自分の"感情"とうまく付き合う
これは、「精神的に自立している」とも言えるかもしれません。
自分の感情がコントロールできなくなり、相手への不信がつのって関係が壊れてしまうのはよくお聞きします。
逆に言いますと、「相手の気持ちが分かりにくいままお付き合いをする」「相手に期待したり望むことがたくさんある」「自分のネガティブな感情との付き合い方をマスターしていない」という状態だと、既婚者同士の恋愛では一気に悩みの渦に飲み込まれてしまうでしょう。
夫と彼を両手につかみ続けるなら

「夫と彼」という二つの違う存在を、それぞれの手につかんでいる女性には、「ここが行き止まり」という地点がだいたいやってきます。
そこは何かスッキリしたというより、モヤモヤとずっと共存するような感覚があるかもしれません。
今後も同じ状況を続けようと思うなら、その感覚がずっと続くことも、受け入れる必要があります。
受け入れようと自分で決め、その責任をとっていくのです。
そもそも「既婚者同士」ということに限らず、婚外恋愛という道に足を突っ込む以上、起こることのすべては自己責任。
自分で今の状況に合わせて答えを見つけていかなければなりません。
そんな中での"迷い"の一例として、Dさんからのメッセージを紹介します。
夫も彼も手放せない事情があります

今、既婚者の方と不倫をしているのですが、相談できる人もいなくて…。少し書かせてください。
結婚8年で、30代後半です。子どもはいません。私も彼も既婚者です。彼にはお子さんもいます。
夫とは結婚前からセックスは一度もしたことがありません。理由は、夫がしたくないからです。
ずっと不満で話し合いもしましたが、解決はされませんでした。もちろんスキンシップも一切ありません。
彼と付き合うようになり、夫には興味がなくなり、現在は家庭内別居のような状態です。
私には持病があり、仕事は一切していません。寝込むこともあり、経済の面では夫に全面的に頼っています。
本当は彼と結婚し、私も子どもを持ちたいと思っていますが、彼は既婚で離婚はできないと言っています。
私も年齢的にも身体的にも妊娠は難しいですし、どうしたらいいのだろうと悩んでしまいます。
愛していない夫に感謝して暮らし、彼とは結婚などは考えず、お互いに純粋に好きでいることを続けていくのが、自分にとっての最善なのかなと思います。

それ以上先には、進めない。

Dさんご夫婦は結婚する前から、性的な関係はなかった。
話し合っても、それはどうにもならなかった。
お互いの性質が違うので、Dさんが夫ではない相手とお付き合いされるようになったのは理解ができます。(セックスレスについては、こちらのコラムで詳しく書いています)
そして、「お互いに純粋に好きでいることを続けていくのが、自分にとっての最善なのかな、と思います」とありますが
はい、それがベストです。
というより、その状態から先には、もう進めないと思います。
今Dさんがおられる地点は「最善の地点」で、そこで行き止まりです。
なぜなら、この方が既婚者だから。そして、既婚の状態のままを望んでいらっしゃいます。
また、「(持病のため)夫に頼るしかありません」とありますが、夫に頼ることはDさん自身が選んでいらっしゃいますよね。
そのほうが、自分自身が安心をできますし、働かなくていいし、寝込んでいられる。
-もうすでに願いは叶えている-

Dさんは片方の手で「自分が結婚している状態」を、しっかりとつかんでいる。
そのままもう片方の手で、自分が手に入れられる望みをつかんでいる。
それが今の状態です。もう、ちゃんと願いはつかめています。
片方の手でつかんでいる「自分が結婚している状態」をそのままにしておきたいのなら、
今、もう片方の手の中にある、
「既婚者の彼は離婚はするつもりがなく、自分と結婚するつもりはない。できたら子どもが欲しかったけれど、それももう難しい」
という現状は、ここが限界であろうと思います。
-夫に失望する必要もない-

Dさんが、もし仮に
「たった一人の愛する男性と一緒に幸せでいたい」
という願いを叶えようと思えば、片方の手で握っている「結婚」を手放さないといけません。
そして、もしもそれを離したとすれば、そのときのDさんのパートナーは今の「自分とは絶対に結婚してくれない既婚の彼」である必要はない。
結果的に、「結婚」とは反対の手でつかんでいたものにも、違和感を覚え始めるでしょう。
Dさんへ、もう一つ言えることがあるとすれば「彼と出会い夫への興味がなくなった」ということについてです。
これは、夫と彼をすごく比べているからだと思います。
「生活と恋愛をわける」とすれば、生活を共にする人に、燃えるような恋愛感情を抱いている必要はありません。
恋愛の相手である彼と比べて、夫にことさら失望する必要もありません。
経済的に支えてくれている夫に感謝をし、それを自分の言動に表していくなら、家庭内別居のような冷たい雰囲気は少しでも解消される糸口が、どこかに隠れているかもしれません。
まとめ

既婚者同士の恋愛において、「お互いの家庭を壊したくない」という思いがある場合は、「現状維持」がゴールでしょう。
そこに何かモヤモヤした思いが発生しても、それは不倫・婚外恋愛を続ける以上、自分が背負っていく思いだと捉え、その道を歩き続ける覚悟が必要です。
自分の道を決め、誰にも理解はされないかもしれないけど、自分で責任をとっていく。
迷ったときには、そのことを思い出す必要がありそうです。
