女性の「好きだけどしたくない」気持ちとの向き合い方(前編)

ある日、ご相談者のBさんからはこのようなメッセージが届きました。

『夫は家族として大切だけどしたくない。』

結婚して8年目。子どもが一人います。産後、育児の大変な時期をすごしている間に、もうセックスはなくてもいいかなと思うようになりました。

夫はそれではつらいようで、なんでしないのかと言われたり、俺が浮気してもいいの?と言われたりします。

我慢してくれているのはわかりますが、話し合ってもあまりこちらの気持ちには変化がないのです。夫のことは家族として大切だけど、したくない…。どうしたらいいのでしょう?

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まずは、このような状況になった場合、放っておいたらこの先どうなるのかについて少しお話しましょう。

ご相談をお聞きする中で、Bさんのようなケースがあった場合、

話し合いたいと言っている相手を避けたり、「あなたがおかしいんじゃない?」とその話題を出しにくくなるように仕向けている場合があります。

いずれ離婚になっても構わないならそれでもいいのですが、夫婦関係を長く維持したいと考えておられるのなら、この行動は危険だと言わざるを得ません。

「趣味が違う」レベルの話ではない

結婚し夫婦という関係になっている以上、『性のことは配偶者とのみ』というルールがありますよね。

夫婦で趣味が違うなら、それぞれの友人と出かけ、楽しむことができます。「趣味は配偶者とのみ楽しみましょう」なんていうルールはないからです。

でも、性のことは違います。

夫婦で性についての価値観が違う、例えば、片方は「もうなくてもいいじゃない」と思っていて、もう片方は「スキンシップや性を大事にして生きていきたい」場合、趣味のように「じゃあ別の人と」というわけにはいきません。

配偶者としかできないことなのに、相手はとりあってくれない、二人の問題として考えようとしてくれない…となると、いずれ本当に、他の相手が必要になってしまいます。

あくまで「二人の」問題

「夫が浮気しました」

「夫がずっと不倫をしていることがわかりました」

「夫から突然離婚したいと言われました…」

というご相談のかげに、妻が性の面で、夫をあまりよく考えずに拒絶していたという理由が隠れていることがあります。

「したくないっていう私の気持ちはわかってもらえないの?」というご意見もわかります。特に、夫から責める口調が出ている場合は、なおさらこう思うでしょう。

誰だって、自分の意見が尊重されたらいいなと思うはず。

でも、これは「二人の問題」なのです。

「私たち、価値観が違うね。これ、なんとかできるものなのかどうか、ちょっと二人で考えてみよう」と、とりあげてみる姿勢は忘れないでほしいと思います。

2.自分に問いかける3つのこと

では、「好きだけどしたくない」という気持ちとの向き合い方についてです。

先のBさんを例に見ていきます。

ここで一度見直してほしいのは、Bさんご自身の心の中です。夫の態度は一度脇におきましょう。

ご相談によって細かい部分は変わるのですが、大きくはこの3つを、一度ご自身に問いかけてみてほしいと思います。

1.自分の「セックス」の定義

2.しなきゃいけないと思い込んでいないか

3.復讐としてセックスの拒否を使っていないか

(1)自分のセックスの定義

例えば、Bさんが「セックスって心がときめく相手とするものだ」と思っていたとしましょう。

結婚後何年も経った夫には、正直もうときめきは感じない。

だとすると、Bさんの中では、に夫はセックスする対象から外れるでしょう。

また、「刺激を得るのがセックス、少しでも嫌な状態ならしないほうがいいもの」と思っていたとしましょう。

恋愛していた時代にはこういう定義でもいいかもしれません。

でも結婚して環境が変わった、相手との状況も変わっていくなかで、夫婦間でセックスが成り立ちにくい定義をBさんは持ち続けているのかもしれません。

私はよくこんなふうにセックスの定義を変えてみませんかとお伝えします。

・セックスは、刺激を得る必要はなく、安心を分かち合うもの。

・セックスは、心がときめく必要はなく淡々とするもの。

・セックスは、自分にはもう必要ではなくても、夫婦には必要なもの(ただし頻度や内容は相談の上で)。

・セックスは、「私たち夫婦だよね」と確認するためのもの。

過去には、「そう捉えればいいのかと思ったら行為ができました」という方もおられました。

(2)セックスへの思い込み

そして、セックスの中で自分がしなければいけないと思い込んでいることも洗い出してみます。

例えば、

・一度応じたら、また誘われるたびに応じなければいけない

・気持ちよくならなければいけない

・長い時間をとられる、疲れる

・相手の思い通りにならなければならない 

「以前していたころと同じようにしなければならない」というのが、よくある思い込みです。

夫が実際にこれを望んでいるかはわかりません。

「こうしなければならない」と思うあまりに拒否されるくらいなら、あれもこれもしなくていいから、応じてほしいという考えのパートナーもいるはずです(それだけ拒否されるのはつらいことなのです)。

そこはコミュニケーションをしてみないとわかりません。

「一度応じたら1カ月は誘わないでほしい」「短い時間で終わってほしい、いちいち気持ちがいいかを確認しないでほしい」

もし相手にこうリクエストして、「全部受け入れるよ」と言われたら、Bさんの気持ちも少し変わるのではないでしょうか。

大事なのは、自分が負荷のかからない形に調節していくことが、二人の間でできるかどうかです。ここには、相手の譲歩や工夫も必要になります。

(3)セックス拒否は復讐の手段か

最後のひとつは、「夫への復讐として、セックス拒否を使っていないかどうか」を自分の中で確かめてみること。

本当は、日々の育児や家事の分担で不満があるのに、それを解決しないまま、腹いせに夫の要求を却下していないか?ということです。

この場合、問題があるのはセックスではなく、日々の育児や家事分担のことで、

・夫に言えていないこと

・伝えていないこと

・あきらめていること

があるはずなので、そこについての自分の気持ちをしっかり見る必要があります。

過去にも、「復讐しているって気づいたら、もういいかと思えてレス解消に向かいました」というお声をいただいています。

3.変わろうとするだけでも

ここまでは、「好きだけどしたくない」という気持ちについて、向き合って「変えられる部分」をいろいろ挙げてみました。参考になるものがあれば幸いです。

一方、この気持ちは「変えづらい部分」もあります。

それは、自分の中の生理的な反応です。嫌だな~という感覚。これは薄まることは多少あっても、ゼロにすることは難しいでしょうし、それでいいのです。

逆に言えば、嫌だな~という感覚があっても「変えられる部分」がありそうなら、実験してみる気持ちで自分の気持ちと向き合ってみてはいかがでしょう。

さて、ここまでをお読みいただき、もし実際に、自分の中に「変えられる部分」があるかどうか探してみようと思われる方がいらっしゃるなら、その方はとても愛情深い方だと私は感じます。

セックスレスの問題においては、したくない側の願いが叶っていることがほとんどです。夫婦の問題としてではなく「したいしたいと言い続ける相手の問題」で済ませている方も少なくありません。

したくはないけど、自分にできる工夫をしてみる姿勢。それは、パートナーにとってはとてもありがたいことであり、その結果がどうなるとしても、夫婦お互いが本音に近い気持ちをやりとりできることを願ってやみません。

そして、こうしていろいろ考えてみても、思いつく工夫を試してみても、夫婦で話し合いを重ねてみても、やっぱりどうにもならないということもあると思います。

そういう場合はどうしたらいいのか、それは次回の後編でお伝えしたいと思います。

〉〉後編へつづく。

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