親が絶対に覚えておくべき「登校しぶりをこじらせない3つの言葉」

新潟県村上市に、学校復帰率100%のフリースクール 『居学処 水野谷塾』 があります。ここでは、長年不登校だった子どもでも、早くて1週間、長くても1年半で「自主的に」学校復帰します。経営するのは、公立の小学校教員を15年務め、また自身も「不登校児の親」を経験した水野谷理恵先生。水野谷先生の信念は「子育てはコツである。」アドバイスを受けた保護者からは「マジで神」「もう一人産んでもいいと思えるくらい子育てが楽になった」と感動の声が鳴り止みません。
今回は、最近ネット上でも多く見られる「登校しぶり」の対応について、水野谷先生にこじらせないコツを伺いました。

まず分かっていただきたいのが、「学校に行きたくない。」と言ってきた時点で、子どもはかなり傷ついている状態だということです。

そんな時に、あの手この手で学校へ行かせようとすると、不登校を助長させます。まずは深呼吸して、今からお伝えする3つの言葉をかけ、子どもを安心させるような関わりをしてください。

この方法だと1週間も休みません。長くて3日です。

1つ目の言葉「分かったよ。」

初めて我が子に「学校に行きたくない。」と言われた時のショックは相当なものでしょう。頭が真っ白になってフリーズするかもしれません。「仕事を休めないのに!」と追い詰められた感覚になるかもしれません。

そんな風に頭と心がパニックになっても、「学校に行きたくない。」と言われたら、まずじっくり子どもの顔を見てください。

そして間を空けてから「分かったよ。」と静かに言ってあげてください。

大抵の親御さんは、「お願いだから学校へ行って!」と懇願したり、「嫌なこともあれば楽しいこともあるよ。みんなそうだよ。」なんて子どもの気持ちをうやむやにするようなことを言って、なんとか学校へ行くように仕向けます。

でもこれは、私の経験からすると不登校を助長させる対応だと言えます。

最初のうちは子どもも、嫌な気持ちを押し殺して頑張って行くんです。

でも、それを続けていると5分の遅刻が30分になり、そのうち教室に行けなくなり保健室登校が始まるのです。

親の理解が子どものパワーになる

子どもにとって、「学校に行きたくない。」と言うのはとても勇気のいることです。学校は行かなくてはいけないところだと、ほとんどの子どもは感覚的に理解しています。

ですから、「学校に行きたくない。」と言えるまでには、たくさんの苦しくつらい思いをしているはずです。

そんな時に親から「分かったよ。」という言葉をかけられたら、子どもは心底安心するでしょう。

この「安心する気持ち」がとても大切なのです「自分のことを分かってもらえた」という感覚が、子どもの心を癒し、パワーを与えます。

反対に、家族に自分の気持ちを分かってもらえなかった時は、心に大きなダメージを受けます。最後の砦が崩れ落ちるような感覚を味わいます。

実際には、分かってあげるだけで、特別何か対処しなくても、学校に行けるようになるケースもあります。

2つ目の言葉「どうしたの。」

「分かったよ。」と伝えたら、また子どもの顔をじっくり見て「どうしたの。」と聞いてください。

「できれば話を聞かずにうやむやにしたい」という邪念が湧くかもしれませんが、誠心誠意をもって話を聞いてあげてください。この親の姿勢も、傷ついた子どもに深い安心感を与えます。

それに、「うやむやにしたい」なんて思いは子どもにはビンビン伝わってしまいます。そんなことを親にされた子どもは、誠実という言葉を知らない「事なかれ主義」の人間へとまっしぐらです。

「どうしたの。」と尋ね、誠心誠意話を聞く一方で、このことも忘れないでください。たいていのお子さんは、学校に行けない理由を言うことはできません。

学校に行けない理由が自分の心の中ではっきりしていても、その思いを口にできないのです。

それはわざと言わないのではなく、心では叫んでいるのになぜだか言えないのです。子ども自身どうして言えないのか分かりません。自分は言いたいのに。

そもそも理由の把握すらできていないかも

中には、どうして学校に行きたくないのか、その理由すら自分でも分かっていない子もいます。この状態になる要因はさまざまですが、大きく分けると2つのタイプに分けられます。

実は鈍感タイプ】

1つ目は「実は鈍感タイプ」。外からの刺激を否定せず、受け入れることに抵抗のない性質の子です。周囲から見たら「それ、嫌われてるよね?」「意地悪されてるよね?」ということでも、本人は気付いていないことがあります。ただ、このタイプはとても明るく友達ともよく遊んでいるタイプもあれば、一見落ち着いて穏やかだと思われるタイプもいて、見た目では一般的な「鈍感」のイメージと異なることがあります。いつの間にか一人ぼっちになったり、意地悪されるようになったりして、気付いた時には自分で対処できない事態になっていることがあります。

【敏感繊細タイプ】

2つ目は逆に、敏感で繊細な性質の子です。大人でも、理由は分からないのにその場の空気に「違和感」を覚えてモヤモヤする時がありますよね。そんな感じで、「なんか受け入れ難いもの」がそこにあるんです。でも、それが何なのか分からないし、どうしてそれを受け入れられないのかが分からない。また、このタイプは【大人】なことが多いので「先生」の矛盾するような発言は、「なんか言っていること違うよね」と勘づきます。でも上手く言語化ができないので、いつの間にか抱えきれないほどモヤモヤが大きくなり、学校へ行けなくなります。

もし、子どもが学校に行けない理由をはっきり答えられなかったら、「なんて言えばいいのか分からないんだね。分かったよ。今日はゆっくり休もう。」とだけ言って休ませてあげてください。

なんでもかんでも分析する必要はありません。「とにかく苦しくて学校に行けないんだ」という状況と思いを理解してあげれば、子どもは十分安心します。

もしこの時に、「○○ちゃんが嫌なんだ。」などと答えられたら「よく言えたね。言ってくれてありがとう。つらかったね。」と言ってあげてください。

3つ目の言葉「先生にお伝えしてもいい?」

話を一通り聞いたら、「先生にお伝えしてもいい?」と、意見を聞き、判断を任せてください。選択権を預けてください。

そして、その言う通りにしてください。これは「子どもの人生を子どものものにしてあげる」行為です。

提供するのは大人の役目。でも、どんな人生を送るのかは子どもの自由。自分の人生ですもの、自分で作っていきたいですよね。

子どもは、こうして親に自分の意見を尊重されると「ありのままの自分を受け入れてもらえた」と感じます。

決して「休んじゃえ」と軽く言わないで

フリースクールをしている私は当然、子どもたちに「学校は行かなくてもいい」と言います。

学校という場で個性が認められず、つらい思いをしているなら行かなくてもいいと思います。だって「学び」はどこでもできますから。

しかし、ただ単に「面倒だから」「自分の意見が先生に受け入れてもらえなかったから」「集団行動がイヤだから」という自分勝手な価値観を押し通すために学校に行かないというのは、推奨していません。

その価値感だと、その後も困難が続いていくと思います。ですから、「学校に行きたくない。」と言われた時に軽く「いいよ、いいよ、休んじゃえ。」とは言わないでいただきたいのです。

子どもの自分勝手を許す親の対応は、「義務を果たすのは面倒だ。自分は自由でいたい。面倒なことはやりたくない。」という自分勝手な価値観を子どもに植え付けます。

コロナ禍で学校での体験活動が激減し、以前よりも「家庭教育の指針」が子どもの成長に大きく影響を与えるようになった時代ですので、あえて最後に言わせていただきました。

登校しぶりをこじらせない薬は「安心感」

「登校しぶり」の状態を病気で例えるなら、風邪で熱を出したようなものです。風邪をひく時は、「心身の疲労や日頃の生活習慣」が土台としてありますよね。

でも、それがすっきり改善されなくても、とりあえず「薬」を飲んで風邪の症状を改善すれば、また頑張れる。でも、長い目で見たら「土台」を改善しないとすぐにまた同じような状態になってしまう。

今回のお話ですと、この「薬」に当たるものが「安心感」で、「土台」にあたるものが「登校しぶりの原因」です。

ですからまずは「安心」させて応急処置をし、そのあと原因解明をして土台をと整えれば、登校しぶりはこじらせずに完治させることができます。

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