
志緒村亜希子[元・子ども苦手カウンセラー/8歳男児の母/感情の専門家/やさぐれ女子の駆け込み寺]
妊娠出産のテーマを通して本当のわたしらしさが見えてくる!?忙しい毎日の中「子どものことは“そのうち”考えたい」と思う今だからこそ見つめたい、産む、産まないのもっと手前にある「わたしの本音」。豊かな人生を、ここからはじめよう。
「“いつか”私たち夫婦は子どもを持つのだろう」
心理カウンセラーのキャリアが軌道に乗り始めた37歳のとき、私はそう、漠然と思っていました。
37歳と言えば、子供を持つことを考えるなら急いだ方がいい、と言われる年齢です。
それでも仕事は楽しく、充実した日々を過ごしていると
「仕事はいいけど、何を考えているの?」
痺れを切らした母親が言いました。
忙しくして、端からは将来を真剣に考えようとしていないように見える私に、子供のことをどう考えているのかを問いただしたかったのです。
「うるさいなぁ、言いたいことは分かってる。」
そう。実は頭では分かっていたのです。この先どうするべきなのか、本当はもう少し夫としっかり話し合うなり自分で考えたりしなければならないのだろう。
けど、あまり気が進まない。
喧嘩腰でしかこのテーマについて話せない自分にも嫌気が差していたのは、母の気持ちも痛いほど分かるから。
面倒くさすぎて直視したくなかった本音
私が、世間で言われる「タイムリミット」を薄目でやり過ごしていたのは、仕事だけが理由ではありませんでした。
正直に言うと、自分の妊娠出産について考えるのが「面倒くさい」と思っていたのです。
もちろん、そんなこと37歳で言っている場合ではないことはもうとっくに分かっていました。
ただ、これまでの挫折や苦悩があって、やっと好きな生き方を見つけたことを思うと、しばらく心穏やかに自由に暮らしていたかったんです。
ところで「面倒くさい」ってとても便利な言葉ですよね。私はしばらくこの「面倒くさい」が、自分の妊娠出産についての本音だと思ってきました。
ところが心というものは、ひとつ気がつくとフェードアウトするどころか、そこから育っていくものです。
自分の心の中に漂う、うまく言い表せないものをまるっと雑に「面倒くさい」という言葉で片付けたと思ったら、だんだんと面倒くささで覆われたものの輪郭が見えてきてしまいました。
面倒くさすぎて直視したくなかった本音。それは
――私は、お母さんになるのが怖い。
私は心のどこかに「お母さんになるのが怖い」という思いをずっと抱えていたのです。
ここでちょっと、質問です。
あなたは今まで「自分にとっての妊娠出産」について、考えてみたことはありますか?
はたらく女性にとってこのテーマは、いつかしっかり考えなければ、と頭の片隅にあるものだったりするかもしれません。
そんな中で先にお伝えしておきたいことがあります。それは、ここでは産むとか産まないとかいうことは重要視しません。また、現実的にどう動くべきかなどについては今は横に置いておきましょう。
それよりも皆さんと一緒にこの連載でゆっくり見つめたいのは、あなたご自身の妊娠出産について、いま自分がどう感じ、捉えているかという価値観の部分です。また、このテーマのまわりにある思いとか、記憶、またそれに伴う気持ちも湧いてくるとしたら、それもひっくるめてあなたと一緒に見守ってみたい、と思っています。
--妊娠出産は「腹が立つ」と答えた女性
自分にとっての妊娠出産とは、たとえば…
「いつかしたいもの」
「まだ深く考えたことがなかった」
「早いうちに子育てしたいので、そのために今から情報収集している」
「将来はパートナーと2人で暮らしたい」
「なんとなくドキドキするテーマだな」
などなど。
具体的な言葉が出てくる方、何となくのイメージしか今は浮かばない方。100人いたら100通りの答えがあると思います。
ところで、Windys編集長にもこの問いを投げかけてみたところ、「なんだか腹が立つ!」と教えてくれました。
つい"熱く"なってしまうテーマ
聞くところによるとまず、まだまだ能力あふれる女性たちが妊娠出産によってキャリアを中断せざるを得ないいまの社会が浮かんだそう。
そして、「自分が活躍するより男性に守ってもらえばいいという気持ちが透けて見える女性は、ムカつく!」と。もっと自分を輝かせようよ!と思うそうです。
また今そのことを思い出して「つい熱くなってしまう!」と教えてくれました。
また他に、価値観が浮かぶというより「仕事どうしよう?」と、お仕事とのバランスや時期、環境についての心配だったり、「どうやって?」と妊娠する方法や出産までに必要な医学的知識について考えたくなるという方もいらっしゃいました。
ちなみに私の場合、妊娠出産に対する価値観は、「得体の知れないもので、自分の価値観とはいえ触れるのに勇気がいるもの」でした。
言えたら、癒える。
冒頭で、キャリアが順調で妊娠出産を考えるのは面倒だと思っていた、37歳だった頃の私の話をしました。
"面倒くさい"という感覚によくよく耳をすますと聞こえてきたのは
「実はお母さんになるのが怖い」
という本音。
もちろん実際に仕事は忙しかったのですが、一方でそれを言い訳にしていたのは、「怖さ」に向き合いたくなかったから。
母親になるのが怖いなんて、大の大人としては情けない本音です。
--"安心"が生まれた私
でも、妊娠出産や子どもの話題に、やけに心が反応してしまう理由を知れて"安心"が生まれ、ほっとしたことを思い出します。
安心したことで「怖さを持ったままでいい」と思え、それ以降は家族や友人たちとこの話題が出ても変にムキになったり避けたりしなくなりました。
むしろできるときは素直に「私、ちょっと怖いんだ〜」など、気持ちをさらっと口にしてみると、誰一人わたしを白い目で見る人はなく、お母さんになるのが怖いと感じる自分を私が一番批判していたのだと気づくことができました。
得体の知れない苦手意識を、人に勘付かれないようにしてきた過去を振り返ると、自分で自分を理解してからはなんと呼吸のしやすいこと!
そう。
言えたら、癒えていく。
妊娠出産のテーマが教えてくれること
妊娠出産のテーマはさまざまな価値観をはらんでいます。単純に子供を産みたいか、将来どうしたいか?ということだけではなく、そのベースにある「いまのあなた」を教えてくれるでしょう。
だからこそ私は女性の皆さんに、自分の妊娠出産についての価値観を見つめていただけたらと思っています。
次回はなぜそれが大切なのか、もう少し具体的に見ていきましょう。 女性としてどんな生き方を望んでいるのかも、この中にヒントが詰まっているかもしれません。