乳腺炎は、授乳中であれば、いつでも起こります。
産後2~3週間目が最も起こりやすく、大多数は6週間以内に起こります。
乳腺炎が悪化すると、何より痛みが強くなり、高熱が出ます。
これは、産後のママにとって身体も心もダメージが強いもの。
母乳育児が生活の大部分をしめるママにとって、悪化した乳腺炎の経験は、強烈な一撃を食らう感覚でしょう。
ママによっては、母乳育児を断念せざるえないケースもあります。
ですから、現場の助産師としては乳腺炎になりかけたら、早めの対処で悪化を防いでほしいと常日頃から思っています。
現在、日本では、乳腺炎に対して、健康保険が使えるようになりました。
出産された産院に相談して薬をもらうなどの、乳腺炎の初期対応を気軽に受けることができます。
ここでは、乳腺炎になりかけたときのサインやすぐできる対処法も解説しています。
病院や産院に受診する目安としても活用してもらえればと思います。
授乳しても、しこりが取れない
普段は授乳をすれば、乳房の張りやしこりは取れてスッキリした感じも出てくるはずです。
毎回スッキリしないとしても、一日の何回もの授乳で、乳房が軽くなる安心感は感じ取れるもの。
しかし、意識して授乳しても張りやしこりが取れないときは、乳腺炎へ移行しかねません。
赤ちゃんに、ちょくちょく母乳を吸わしたり、搾乳したりしてください。
もしミルクを併用している様なら、しこりがなくなるまで母乳をメインに置き換えましょう。
また、母乳の出をおさえる意味で、乳房を水タオルで冷やすのも良いでしょう。
しこりがズキズキ痛む
ズキズキするときは、母乳がスムーズに出なく、乳房内の一部に母乳が残っている状態です。
痛みの質と強さで対処が変わります。
おっぱいを触らなければ痛くないなら、様子を見て大丈夫です。
触ったときの痛みが、筋肉痛や青タンのようなものであれば、それも大丈夫です。
触らなくてもズキズキ痛むは、注意が必要。
触らなくても脈打つ様にズッキンズッキンと痛むときは、乳腺炎になりかけている可能性があります。
また、触れないほどの激痛や、触られると飛び上がるほどの痛みは、ほぼ確実に乳腺炎と考えられます。
しこりが熱をもって赤い
母乳がおっぱいの中で滞っているに加え、追い打ちをかけるように母乳がどんどん作られている状態です。
ひどくなると、ピンク色→深紅色→暗紫色へと変化してゆきます。
冷やすことが最も効果的です。
また、授乳を意識して増やしてください。
それでも悪化していくようなら、産院に相談してみましょう。
発熱・頭痛・寒気・関節痛
インフルエンザやコロナの症状と似ていますが、おっぱいに何か問題があれば、乳腺炎になりかけている可能性が高いです。
おっぱいに痛みやしこりや違和感がある場合は乳腺炎が強く疑われますので、早めに産院や病院に相談してください。
赤ちゃんが鼻かぜ
赤ちゃんが鼻かぜになると鼻呼吸がしづらくなるので、おっぱいを吸いきれず母乳がたまってしまいます。
また、鼻水などの細菌がおっぱいに着くので、乳腺内へ細菌が繁殖しやすい状態になり、乳腺炎を起こしやすくなっています。
授乳してもスッキリしないようなら、搾乳して母乳をため込まないようにしましょう。
また、授乳後は乳首・乳輪は清潔にしてくださいね。
しこり・発熱を繰り返している
単発のおっぱいトラブルはなんとかやり過ごせているが、それを繰り返している場合。
また、トラブルのたび、しこりの場所が変わってきているようなときは、別の注意が必要です。
繰り返すトラブルは、一度、産院や病院に相談してみてください。
かなりまれではありますが、授乳中の乳がんの早期発見にもつながることもあります。
また、ママ自身の体調不良でも、簡単な細菌感染を起こし、乳腺炎のような状態になることもあります。
心穏やかに過ごすことは抵抗力を保ち、自己回復力も上げていきますので、意識してくださいね。
まとめ
「乳腺炎が悪化したせいで、母乳育児自体を断念せざるを得なくなったのが本当にキツかった。」
このように乳腺炎の体験を話されるママの言葉を、育児が落ち着いた数年後であっても耳にすることがあります。
そのたびに、助産師として、ママが乳腺炎を悪化させないように努力することを肝に銘じていました。
もちろん、乳腺炎にならないにこしたことはありません。
日頃からそうならない工夫は必要でしょう。
でも、もし乳腺炎になりかけてしまったと感じたら、健康保険も使えることですし、出来るだけ早く対処するようにしてくださいね。