年齢・職業・性別問わず大好評の「いっぺん死んでみる®︎〜今を生きるためのワークショップ〜」を主催する、訪問診療医の「上原暢子(うえはらのぶこ)」先生。
ここは、暢子先生の身も蓋もないかもしれないけど真剣なお悩み相談室です。
先生の専門である介護や看取りにまつわることはもちろん、子育てや仕事の悩みなど、幅広いジャンルの悩みに回答していきます。
本日のお悩み
自宅から車で30分のところに、父(93歳)と母(85歳・認知症)が二人で暮らし、老老介護中です。
最近、私に相談もなく自宅の修繕を依頼して詐欺にあい100万円損失したり、ゴミを全く出していなかったり、洗濯物がカビていたり、お風呂に全然入っていなかったり、ということが続き、いいかげん施設に入ってもらいたいと思っています。
母の認知症も進んでいますし、老老介護の限界もきていると思うので、どうか施設に入ってほしいと毎回説得しているのですが、聞く耳を持たずです。
どうにか、うまく父を説得できる方法はないでしょうか。
暢子先生からの真剣な答え
お父様をうまく説得できる方法...
ありません。(笑)
お父様もどこかのQ &Aで「どうにか子供を黙らせる方法はないでしょうか」と相談されているかもしれませんよ。
そもそも「老老介護の限界」とは、どこでしょうか。
「私に相談なく自宅の修繕を依頼して詐欺にあい100万円損失したり、ゴミを全く出していなかったり、洗濯物がカビていたり、お風呂に全然入っていなかったり」とありますが、
ゴミ屋敷でも(実際にあります)、
衣服からキノコが生えていても(同)、
1年以上お風呂に入っていなくても(同)、
お父様にとって「人に迷惑をかけてない」のであれば、お金もゴミもカビもお風呂も、許容範囲なのかもしれません。
次に、お父様が質問者様に相談しない理由は、何でしょうか。私には「(親に)言ったら心配するから」「(親に)ダメって言われるから」と、やりたい事や欲しいものを言わなくなった経験があります。
-「親役」と「子供役」を互いに演じ切る-
亡くなる時ですら子供に迷惑をかけないように、というタイミングでお別れをしていかれた方をたくさん見てきました。
その奇跡のようなタイミングに、どんなに年を取っても、いつまでも、親は親なんだなあといつも思います。
めんどくさっとは思いますが、親として+男性のプライドを考えると、「いつまでも親に親役をさせてあげる」「自分はいつまでも子供役でいる」のが、私たち子供にできる最適解なのでは。
-施設に入っても、きっと悩みは尽きない-
そしてこれからは、要介護者や認知症の方を、施設に入れればよいという時代ではありません。
介護職のマンパワー不足もあり、個々にフレキシブルに対応できる施設はレアです。起床時間、食事や入浴の回数など、本人の意向とはあまり関係なく、施設のスケジュールで毎日が過ぎていきます。
家ではできていたことが、できなくなる(こともある)。管理のために目の届くところに座らされる(こともある)。塗り絵がしたくて塗り絵をしているのか(したい人もいる)etc
施設に入ったとしても、お悩みは尽きないように思います。
-どうなっても、もう後悔は残らないはず-
最後に。質問者様は、「あの人と結婚したら絶対幸せになるから!」と誰かに何度も説得されたら、ピンときてなくてもその人と結婚しますか?
「どこでどんな風に、誰と過ごしたいのか」全てを叶える事はできないかもしれませんが、「誰の」願いなのか、優先順位はどうなのか。
心配という名の愛情と、迷惑をかけたくないという愛情は、親子ならではないでしょうか。「四方八方うまくいく方法」はありませんが、相談者様はもう既に十分悩み、尽くされていますから、後悔は残らないと思います。
ああやっぱり身も蓋もない回答しかできませんでした。ごめんなさい。
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